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デザイナーがエプロンに込めた持続可能性と工業的なイメージ
みなさんは、café 1886 at Boschのエプロンのデザインをよく見たことがありますか? 実は少し変わった形をしています。一番の特徴は足元が二股に分かれていることです。カフェのスタッフが日々着用し、毎日洗っているこのエプロンには、“ボッシュ”というブランドへの思いが込められています。
古くから続く日本の技術を活かしたアパレルブランドの立ち上げ
カフェのエプロンをデザインしたのは、ファッションデザイナーの石川俊介さん。ファッションブランドのマーカウェアのデザイナーであり創業者です。自社ブランドのファッションデザインのほか、スポーツメーカーやアウトドアメーカーなどのデザインサポートも行なっています。
石川さんがファッションに興味を持ったきっかけは、学生時代(1980年代〜1990年代前半)にハマっていたイギリスバンドでした。
石川「ちょうど世界中から日本に様々な音楽やファッションが入ってきた時期だったんです。最初はパンクから入って、そこからモッズ※が好きになりました。高校生の頃は制服を改造して襟を細くした短ランにビッタビタに細いパンツを履いて歩いてましたね。当時はまだヤンキー文化が根強かったので、周りの人は長ランに太いパンツの人ばかりでしたけど(笑)。」
※1950年代後半から1960年代中頃にロンドン近辺で流行した音楽やファッションをベースとしたライフスタイル。
気がつくと音楽への興味は薄れ、残ったのはファッションへの熱い想い。インポートブランドとDCブランドが世間を席巻するなか、ジワジワと流行り始めていた“古着”が石川さんをファッションの世界へと強い力で引き込んでいきました。
大学卒業後、一度は流通系のコンサルティング会社に就職したものの、ファッションでお店をやりたいという強い想いが消えなかった石川さん。約5年で退職し、それまで住んでいた兵庫から東京に出てきました。
まずはお店を開業するつもりでしたが、ひょんなことからすぐにブランドを立ち上げることになったのです。
石川「まずキーにしたのがメイドインジャパン。日本の繊維産業はどんどん落ち込んでいっているけど、技術面においても機械面においても、日本でしかできないことがいっぱいあるんですよね。その文化は後世に残って欲しいし、残していかないといけないと思って。」
実は日本という国は、生地づくりから実際の洋服づくりまでワンストップで行える数少ない国。それぞれの工場が小さいので、小ロットからの製造が可能です。また、織機も昔ながらのものが未だに使われていて、独特の風合いを出すことができ、海外からも高い評価を得ています。
そんな日本の優れた繊維産業を残したい――。
石川さんがブランドを立ち上げて20年以上経ちますが、その想いは変わりません。そんなブランドへの想いがcafé 1886 at Boschのエプロンにも詰まっています。
ファッションと工業的なイメージ―誠実なものづくりに対する思い
石川「実は古い車が好きで、いまも80年代のドイツ車を修理しながら乗っているんですけど、そのパーツが全部ボッシュ製なんですよ。だから僕にとってボッシュは非常に身近な存在。車の部品や電動工具をつくっているボッシュがカフェなんて面白いなって思ったから、即決で受けることにしました。」
車の部品は15年もすれば廃盤になることが多いですが、何十年も製造され続けているいる部品がボッシュにはいくつもあります。
石川「僕は20年以上サステナブルの精神で洋服づくりを続けてきました。だからかな、ボッシュさんの高い品質で誠実に部品をつくり続ける精神にシンパシーを感じたんですよね。」
カフェの中でものづくりの歴史や雰囲気を感じてほしい
「café 1886 at Boschのエプロンをデザインしてほしい」という依頼を受け、石川さんの頭の中にはあるイメージがすぐに浮かんだそうです。それは、昔の作業用エプロンでした。
その昔、ヨーロッパやアメリカなどで使われていた作業用エプロンは、前が汚れないように前掛け部分が二股に分かれていました。移動しやすく、足を大きく広げて座りやすい。作業がしやすい機能的な形だったのです。
石川さんは、ボッシュが持つ工業的な面を押し出したい、工場で働いている雰囲気や昔のものづくりの雰囲気を出せたら面白いと考えました。
また、石川さんはもともとエプロン好きとおっしゃっていました。マーカウェアでも作っており、海外の古着屋でもエプロンをつい買ってしまうのだそう。趣味の焚き火や車いじりをする際に必ず身につけているそうです。
石川「以前購入したアメリカの大工が使っていたエプロンをベースに考えました。とにかく凝っていて形が面白くて、足元が二股に分かれるアイデアはこちらをモデルにしました。作業用だから作業しやすいし、カフェのスタッフはよく歩くので移動しやすいというのもメリットだと思いました。」
素材にはヨーロッパの雰囲気が感じられるモールスキンというレザーのような肉厚感のある厚手のコットン生地をチョイス。表面がツルッとしていて丈夫で、毎日使っては洗うのにぴったりです。
それをcafé 1886 at Boschのカラーであるネイビーに染めて出来上がったのが、私たちが毎日使っているあのエプロン。もちろんマーカウェアのコンセプトにもある「持続可能性」を意識した、日本製です。他にはないおしゃれで個性的な自慢のエプロンです。
時間が経てば経つほどカフェの空間に馴染んでいくエプロン
エプロンは、カフェのブランドイメージを象徴的する存在です。それと同時に、スタッフを汚れや火、水などから守る存在でもあります。
石川「せっかく丈夫につくったのだから、どんどん使い込んでほしいですよね。その点、café 1886 at Boschの皆さんはとっても優秀。本当によく使いこんでくれていて、すごいなって思います。オープン時に納品した際と比べると全然、風合いが違いますね。すごくいい感じに使い込んでもらい本当に嬉しいです。」
モールスキンは、酒屋の店主がよく腰につけている藍染の前掛けのように、使えば使うほど味が出てくるもの。3年間毎日使用するエプロンの色落ちはカフェのコンセプトである歴史的な要素と馴染んでいきます。
エプロンからも、ボッシュが店全体の雰囲気からものづくりと向き合っている会社だと多くのお客さまに感じていただきたいと考えています。癒しのコーヒーの香りと、心もお腹も満たすグルメサンドウィッチでひとやすみしながら、ふとした瞬間に私たちの工業的な要素の演出も楽しんでいただける場を楽しんでいただけると嬉しいです。